鉄道路線などの歴史に関する記事をまとめました。
Stoughton Line
この路線はProvidence/Stoughton Lineの一部でありBoston-Providence間の本線とはCanton Junction Stationで分岐する。1835年に開業したBoston and Providence Railroadの支線として1844年に開通している。面白いのは、Stoughtonから先、North Eastonまでの延伸が早くも1854年にDighton and Somerset Railroadによって行われたことで、この鉄道は1866年、Old Colony Railroadの一部としてBraintreeとFall Riverを結ぶ長大な路線となる。こうしてCanton、StoughtonはB&PとD&Sの相互乗り入れ区間となった。
1930-70年代にかけてOLd Colony RRはどんどん路線を廃止していくが、旧D&Pもその例にもれず段階的に廃止、最終的には消滅している。しかし、1980年代から路線復活が計画されはじめ、South Coast Railとして2030年の開業を目指すことになった。これにより旧D&Pも復活する予定となっている。下図を見ると、旧D&P、New Bedford and Taunton Railroad、Fall River Railroadが使われるようである。工事の遅延は鉄道の宿命だが、案外、北海道新幹線よりも早く開通するかもしれない。
乗車動画。
Greenbush Line
Greenbush LineはSouth StationとGeenbushを結ぶ約44kmの路線で、19世紀半ばから20世紀前半に存在したSouth Shore Railroadの生き残り部分である。
1845年、Old Colony RailroadがBraintreeを経てPlymouthまで開業。1849年、Braintreeから伸びてきたSouth Shore RRがCohassetまで開通した。これとは別にCohassetからのKingstonをめざすCohasset & Duxbury RRが1871年、South Duxburyまで開業、さらに1874年にKingston(現在のKingston Lineの終点)に到達。1880年、Nantasket Branch RRがNantasket JunctionからPembertonまで営業開始。これらの会社は19世紀末に順次Old Colony RRに買収され、同社自体が1893年にNew York, New Haven and Hartford Railroadの一部となっている。鉄道は夏のレジャー客などで大いに賑わったという。
しかしこれらの路線は1930-70年代にかけて次々に旅客輸送をやめていった。第二次世界大戦の前後にかけては海軍施設Hingham Naval Ammunition DepotとHingham Naval Ammunition Depot Annexの間の物資輸送に使われていたが、それも1962年の後者の閉鎖により終了。あとは細々と貨物列車が運行されていたがそれも1984年に廃止。しかし1990年代に入り、MBTAが路線復活計画をたて、2007年にGreenbushまでが再開業し、現在に至っている。
乗車動画。
Needham Line
Needham LineはSouth StationとNeedham Heightsを結ぶ約22kmの路線である。ただし、この路線の建設は単にこの2駅間を結ぶように行われたわけではなく、複数の路線の結合と廃線の結果、現在の姿になっている。
最初にできたのが、Forest HillsからWest Roxburyを経て南方のDedhamへ向かうBoston and Providence Railroadの枝線(1849年)である。そして、これとは全く別に1853年、Charles River RailroadがNewtonから延伸してNeedhamに到達した。Framingham/Worcester LineとGreen Line D Branchの項にもあるように、この鉄道はもともとBrooklineからNewtonを経て、Providence and Springfield RailroadのHarrisville駅を目指すものであった。
すなわち上図の青線が本線として建設、運行されていたのである。そこへ赤線で示されるWest Roxbury Connection(別名Needham Cutoff)と呼ばれる枝線が1906年に完成、これによりNeedhamとBostonがWest Roxbury経由でもつながることになった。両者はBrookline経由でもつながっていたから、Needham-Bostonは2つの路線で結ばれていたことになる。
しかしCharles River RRは慢性的な資金不足から経営難が続き、1930-40年代にかけて区間廃止が相次ぐようになる。そんな中で生き残ったのが、Needham Heights-Needham Junctionの短区間とWest Roxbury Connectionであり、これを併せてNeedham Lineが運行されているのである。また、Brookline-Newton HighlandsはGreen Line Dの一部となり、Medfield Junction-Millisは貨物列車が断続的に運行されているようである。
終点Needham Heightsからは、Newtonに向けてまだ線路が残っているが、Charles Riverから先は撤去され、遊歩道(Upper Falls Greenway)となっている。
Needham Junction駅では南方への線路がわずかな区間だけ残っており、分岐駅のような様相を呈している。その先はやはり遊歩道化されBay Colony Rail Trailと呼ばれている。
乗車動画。
Watertown Sqaure, Watertown Yard, Newton Corner
わずか0.7マイルの範囲内に位置するこの3つのポイントは、それぞれMBTAの複数のバス路線が発着するバスターミナルとなっている。同じMBTAが管理しているのになぜ1か所ではないのかというと、やはり歴史的な背景が異なるからのようだ。
Watertown Squareは1847年に建設が開始されたWatertown Branch Railroadの駅に起源をもつ。この路線はFitchburg Railroadの支線としてCambridge-Watertown-Walthamを結んでいた。現在はBus59と71の発着点となっている。
Watertown Yardは、1900年にボストンからの路面電車がWatertown Squareを経て延長してきたもので、のちにGreen Line Aのターミナル駅となった。1969年に同線が廃止されたのちはバスターミナルとなり、同線の代替路線のBus 57のほか複数の路線の起点となっている。2024年には新ターミナルが供用されている。
Newton Cornerは、Boston and Worcester Railroadの駅として1834年に開業。19世紀末にはRichardsonian Romanesque styleの駅舎も建てられた。さらにHarvard Sq, Park St, Walthamなどから路面電車が到達するようになり、交通の拠点となった。Massachusetts Turnpikeの開通により、最終的に駅は廃止されたが、現在もMBTAの複数のバス路線(Bus 553, 554など)の起点・通過点となっている。
Reservoir Yard
Green Line DのReservoir駅には、電車の発着するホームの反対側に、いくつか引き込み線がある。その先にあるのが車両基地・Reservoir Yardである。
上の写真にある手前のレールを背面方向にたどっていくと、なんとGreen Line Cの終点・Cleveland Circleにつながっていることがわかる。
Green Line Cは1889年に開業し、1896年にBoston College方面まで延伸。BostonとNewtonの境界を終点とし、ここでAuburndale方面に向かうCommonwealth Avenue Street Railway(のちにMiddlesex and Boston Street Railway)と接続していた。しかし1915年には当時はまだ鉄道駅だったReservoirまで路線が短縮。のちにGreen Line Dが路面電車路線となったことで、Resrvoir Yardは両線の車両基地として使われることになったのである。
上の写真ではヤードからCleveland Circleに向かって線路が出てきているのが見えるが、車道の中央にある島状の歩行者待機所に線路が接している。もとは電車の乗降などに用いられていたのかもしれない。
この線路、実はさらに分岐してBrighton方向へ向かい、少し先のChestnut Hill AveでGreen Line Bと合流する。Green Line BはCleveland CircleやReservoirを経由していたGreen Line Cのルートを変更したもので、Boston Collegeを終点とするもの。ちなみにB Lineの車両基地は、Boston College近傍のLake Street Yardであり、Resevoir Yardは使用していないようである。
Boston近郊のStreet Car (路面電車)の歴史は鉄道と比べても複雑すぎ、資料となる本もあまりないが、Reservoirにくるとその歴史の一端を垣間見ることができる。
周辺の動画。
Framingham/Worcester LineとGreen Line D Branch
Newton市内を東西に横断する交通機関は2つあり、北側を走るのがコミューターレールFramingham/Worcester Line、南側を通るのが地下鉄(路面電車)Green Line Dである。
Framingham/Worcester Lineは、Newton Corner, Nonantum, Newtonville, West Newton, Auburndaleを通るのに対し、Green Line DはChestnut Hill, Newton Centre, Newton Highlands, Wabanをカバーしている。
実はこの2線の歴史は古い。Framingham/Worcester Lineのほうは、1834年に部分営業を開始したBoston and Worcester鉄道をベースにしている。B&WはのちにNew York州北部の州都Albanyに至るBoston and Albany鉄道となり拡大している。以下の地図は、Ronald Dale Karr著「The Raild Lines of Southern New England (Second Edition)」(Branch Line Press, 2017)より改変したもの。
B&Wが最初に開業した区間がSouth Station-West Newtonであった(乗客が駅馬車に乗り換えるためのRailroad Hotelがあった)ことを考えると、ここでいうNewton駅は現在のWest Newton駅ではないかと思われる。Auburndaleを出た後、Riverside (現在のGreen Line Dの終点)を経由しているのも興味深い。ここからNewton Lower FallsおよびNewton Highlandsに向かう枝線が出ていた(青線)。また、のちにGreen Line Dの一部となるBrooklineに至る枝線が1848年に開通している(緑線)。
他方、Brooklineより先のNewton, Needhamを経てさらに南下すべく鉄道建設を開始したのがCharles River Railroad。1852年にはNewton Upper Falls、1853年にはNeedhamまで開通した。さらに他社と合併を繰り返し、New York and Boston鉄道、New York and New England鉄道と名前を変えて営業を続けていたが、1883年、資金不足に陥り、Brookline-Newton Highlandsの区間をB&Aに売却。1886年にB&AがRiversideからNewton Highlandsに至る枝線(Highland branch、地図の青線)を開通させたため、Newton市内に一種の環状線がで形成され、’Circuit’と呼ばれた。こうして、Boston-Brookline-Newton-Riversideを結ぶ現在のGreen Line Dの原型が出来上がったのである。
現在は環状線はなくなり両線の間に交通はないが、Riversideから北方に向けて、たしかにコミューターレールへの連絡線のようなものが見える。使用されているかどうかはわからないが、かつての名残とはいえるのかもしれない。
ちなみに、環状線の形成、Charles River鉄道の衰退に伴い、Newton Upper Fallsに至る路線は廃止され、鉄道網から取り残されることになった。鉄道跡は現在、Upper Falls Greenwayと呼ばれる遊歩道となっている。
Saugus Branch
Saugus Branch RailroadはEastern RailroadのWest LynnとBoston and Maine RailroadのEdgeworthを結ぶ路線として1853年に開業した。EasternとB&Mは、当時ボストン-メイン間のルートで激しく競合していたが、海沿いを行く前者と内陸を行く後者をつなぐ架け橋として、Boston and Maine Railroad社が建設した。しかし1855年にはEasternに買収され、B&Mへの乗り入れ線を廃止、代わりに南のEverettに向けて延長線を建設した(Wikipediaにはこの新線のみ記述されている)。1853年旅客取り扱い廃止、その後も細々と生き残っていたが2010年に正式に廃止、2013年に軌道を撤去。跡地はNorthern Strand Community Trailとして活用されている。下の地図は、Ronald Dale Karr著「The Raild Lines of Southern New England (Second Edition)」(Branch Line Press, 2017)より改変したもの。
Stoneham branchとWoburn Loop
Stonehamの文化遺産で見たように、現在のこの街の公共交通機関はBus 132のみである。しかしここにもかつて鉄道の来ていた時代があった。もともとBoston and Lowell RailroadとBoston and Maine Railroad に挟まれ、鉄道網から取り残されるような形になっていたのだが、1862年、B&Lから分岐する支線として、4kmほどの区間に6駅を擁して開通している。1958年に実質的に廃止となった。支線の痕跡は、Boston and Maine Railroad Depot (B&Lは最終的にB&Mの傘下となった)をはじめ、Stoneham内でもいくつか見られる。
Woburnの交通機関はBus 134であり、Lowell LineのAnderson/Woburn駅は市街地からかなり離れているが、やはりB&Lの支線としてWinchesterからWoburn Centerまでが1844年、さらにWoburn Junctionで本線に合流する’Woburn Loop’が1885年に完成している。しかしWoburn Centerを通る支線は1959年に廃止となった。
Somerville Junction
2022年に新たに開通したGreen LineのMagoun Sq駅とGilman Sq駅の間にSomerville Junction Parkがある。1880年頃には、Boston and Lowell RailroadがBoston-Lowell間とBoston-Waltham-Northampton間の鉄道(のちのCentral Massachusetts Railroad)を運行していたが、その分岐点がこのあたりだったようだ。
実際、Green LineはコミューターレールのLowell Lineと並走する形になっている。しかしWalthamへ向かうFitchburg LineのほうはFitchburg Railroadのルートであり、Porter Sqを経由する。のちに廃止となったCentral Massachusetts Railroad のWalthamにある遺構がLinden Street Bridgeである。